trick or treat!


「いや、私は純日本人だから。」

そういったら、愛すべき相方は怨めしそうに私を睨んだ。

「何でだよ。いいじゃん、折角のハロウィンなんだからさ。

 こんな所にいないであっちでパーティー楽しもうよ。」

今日は10月31日。

巷ではハロウィンと呼ばれる日だ。

学校では私たち生徒会が中心となり、昼からの授業を潰してパーティーをすることになった。

金持ち学校だからこそ出来る事柄だ。

もともと生徒会長が言い出したことなのだが、生徒会中が巻き込まれ、

会計である私も今日まで、資金めぐりやらなんやらで、走り回る日々を過ごした。

当日である今日、最初の運営が上手くいっているかどうかだけを確認して、

生徒会室に引きこもり、太宰治を堪能していたわけである。

「聞いてんのか?若林!」

こいつの名前は伊原忠幸。

同じ生徒会会計の人間だ。

「聞いている。日本人はパーティーは好かん。」

そう言うと、伊原は私のほうをじっと見て、

事もあろうに、私の持っていた本を奪い上げた。

「なっ、何を・・・・。」

ようやく眼を合わせた私に、伊原はニコリと笑った。

「な?行こう!」

まいった。

元々、どういう訳かこいつの笑顔に弱くて、笑いかけられると何も言えなくなってしまう。

仕方なしに椅子から腰を上げ、伊原から奪還した本を机の上に置き、歩き出す。

「よしよし。 あ、着替えはしろよ。魔女か看護婦がいい!」

看護婦って何だよ・・・・。

「布かぶってお化けにでもなっているよ。」

そう言うと伊原は不満そうに私を見る。

大体看護婦なんて、関係ないだろう。

完璧に伊原の趣味だけだ。

不平を言っていた伊原だが、

ぱっと思い出したように笑顔になり、こう言った。

「trick or treat!」

私は伊原に苦笑いを返す。

ハロウィン。こんなアイルランドかどっかの習慣、日本人には関係がないだろうに。

「菓子なんて、持っているように見えるのか?」

ポケットには折りたたまれた無地のハンカチしか入っていない。

「じゃぁ、トリックの方ね!」

井原は嬉しそうに私の前に立ち、私の両肩を掴み顔を近付けながらニヤリと笑った。


trick or triet?











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  2004/10/31  再UP2005/10/13

当時12時間だけUPして、フリーにしていたのですが、
今回再UPっということと、UPの期間が長いため、
転載禁止とさせていただきます。
久しぶりの更新なのに、短文、使いまわしすみません。