―スキ・キライ・スキ、…スキ。―



「のぅあ!」

空に散る花びら。

「何やってんだよ。裕也。」

俺の隣には可愛い女の子ではなく顔も見たくないような悪友(男)

「花占いをしていたら強風が吹いて花がさらわれていった。」

「いや、お前が投げたんだろ・・・。」

見てたんなら聞くなよ・・・。

「さらわれていったんだよ。風が花なんか信じるなって言いたかったのかも。」

信じて堪るか。

「有美ちゃんは無理か・・・。」

それが親友に言う言葉か。

「無理じゃない!今日、屋上に呼び出ししてるから其処で告るし。」

有美ちゃんとは最近スッゲーいい感じだし、彼氏居ないって言ってたし。

今回はめちゃくちゃ脈ありなんだ。

「今夜は失恋パーティーかぁ。家の喫茶店貸切でやるかぁ。」

をい!ケータイで友達を誘うな!

絶対彼女が出来たお祝いパーティーになるって。

「今回マジ脈あるから絶対上手くいくって。

 お前彼女できたこと無いんだろ?お先に悪いねぇ。」

克に彼女が出来たなんて聞いたことが無いし、現にこの間克自身がそう言っていた。

「彼女はいなくても、お前みたいに童貞じゃないし・・・。」

え???

「・・・・マジ?」

コクリと頷く友人。

「少なくないだろ。最近は。」

俺がかわいそうな気がしてきた。

「お、お前なんか友達じゃねー!!!!!」

俺は走って教室から逃げ出した。

だってそんな事聞いたこと無かったし。

克は女に大して興味ないのかと思ってたし。

克から女の話なんかしたこと無かった。

だから、

だから!

顔のいい男なんか大嫌いだ――――!!!!!!



階段で一人で愚痴を零していると、克は追いかけてくるはずも無く。

変わりにケータイがエキセントリック少年ボーイのテーマを奏で始めた。

俺が克専用に設定した音楽。

さっきのこと謝りに?

『今日の午後8時に俺んちの喫茶店にて失恋パーティ決行。』

・・・・・。

ゼッテー許さねぇ。

有美ちゃん彼女にしたらお前なんか捨ててやる!



放課後。

決行のとき。

気合入れて頑張らねば・・・・。

「裕也君?話って何かな。」

有美ちゃんが話し掛けてきた。

根性を見せろ!

「あ、あのさ。俺。有美ちゃんのこと、好きなんだ。

 彼女になってくれないかな。」

げろが出るほど在り来たりな餓鬼くさい台詞。

一晩考えたけどこれ以外の台詞は思いつかなかった。

「・・・あのね。裕也君のこと結構いいなって前から思ってたんだけどね。」

っお!ひょっとしていい感じ??

「でもね、でも。」

え、ちょっとまって。

この展開って・・・。

「昨日3組の山本君に告白されてさ。

 ほら、彼ってかっこいいじゃん。・・・・OKしちゃった。」

ちょっ・・・。

「だから、ごめんねvでも裕也君のことは、友達としてこれからも大好きだからさ。」

山本・・・・。何て事をしてくれたんだ。

俺の一世一代の告白を・・・・。

「じゃぁ、彼が待ってるからもう行くね。」

有美ちゃんが去った後も、俺はその場に固まっていた。

「だから顔のいい男なんて嫌いなんだ――――!!!!!!!!」



午後8時。

こんな俺は某喫茶店にいるわけで。

友人たちに失恋を祝われている。

「裕治。お疲れ様。」

もはや恋の打ち上げパーティーのようだ。

「・・・克。」

横を見ると整ったいい男としか言いようの無い克の顔・・・・。

「顔のいい男なんて嫌いだ。こっち向くな!」

無茶を言っているのは自分でもわかっている。

でも、今日ぐらい許されるだろ?

「裕也はさ。面白いし、盛り上げ役だしさ。一緒にいると楽しいって女の子すぐ見つかるよ。」

克が俺にビールの入ったグラスを手渡す。

「本当?」

俺は其れを啜りながら克の顔を覗いた。

「本当だって。信じろ。」

克はいつも、何気ない一言で俺を元気にさせる。

だから友達をやめれないんだ。

「ん。信じる。」

うしっ。元気でた。

しばらくは女の子はいいや。

克だって童貞じゃなくても彼女はいないんだし。

「すいません。おつまみって此方でよかったでしょうか?」

・・・・・・。

「ああ。ありがとう。」

一寸待って奥さん。

「克・・・あの子、新人?」

何ていうか。

「ん?ああ。鈴華ちゃんか。」

うん。

「鈴華ちゃんって言うんだ・・・。」

俺はテーブルに備え付けてある花瓶の花を手にとった。

「おい、裕也。お前・・・。」

占うぐらい別にいいだろ。

「鈴華ちゃんは俺のこと―――」




スキ・キライ・スキ、…スキ。






   台詞で100のお題   top


     2004/08/27